ヘンドリクス環境大臣寄稿

一年あまり前に福島第一原発とその周辺地域を訪れ、原子力の利用はいかに甚大なリスクを伴うのかということを目の当たりにしました。2011年3月11日、海底地震が引き起こした津波は日本沿岸を襲い、広い地域が荒野と化し、2万人近くの住民の方々が亡くなりました。その後数日の間に福島第一で起きた原発事故は大惨事となり、当時のドイツにおいては、政治における考え方を根本的に改める契機となりました。ドイツ政府は、国内にある原発の運転期間延長を決定したばかりでしたが、政策転換に踏み切り、原発8基の運転を停止し、残り9基も段階的に稼動停止することを決定しました。これにより遅くとも2022年末にはドイツの全ての原発が停止することになります。

この決定によって、ドイツにおける再生可能エネルギーが大幅に拡大しただけではなく、国内の政治論争が納得性をもって収束し、エネルギー政策、気候変動政策の将来のあり方が示されました。ドイツのエネルギーシフトは、同様の計画を進める他国にとってモデルケースとなるだけではなく、むしろドイツ自身が他の部門や業種で構造改革を行う際に役立つ多くのことを学んでいます。ドイツは2050年までに温室効果ガスニュートラルを広範囲で実現しなければなりません。そのために必要な変革を社会とともに形づくり、新たなチャンスが生まれ、皆が社会的、経済的、そして環境的に持続可能な行動をとるようになることを目指しています。

この枠組みを定めるのが、2016年末に、パリ協定履行のための長期戦略として策定された地球温暖化対策計画2050です。この計画は、経験から学ぶ過程を打ち立て、定めた道筋が削減目標達成のために適切かどうかを定期的に検証することを盛り込んでいます。また、計画はEUの気候変動政策にも合致しています。ドイツの2030年温室効果ガス排出削減目標の「1990年比で最低55%削減」もEUの2030年目標のドイツ分担分に相当します。

エネルギー需要を再生可能エネルギー源で全て賄うまでは、エネルギー部門で脱炭素化を推進するために、特にエネルギー効率を大幅に高める必要があります。これに関してドイツはこれまで日本から学び、今でも活発な交流を続けています。資源効率性の向上もまた、日本とドイツが協力して国際的に取り組んでいるテーマの一つです。日本との協力関係が、二国間でも、またG7、G20といった多国間の枠組みでも築けていることは非常に嬉しいことです。昨年の「脱炭素社会に向けた低炭素技術普及を推進するための二国間協力に関する日独共同声明」は、長期的課題や温暖化対策の更なる局面において、両国が共に進むべき道を示しています。

米国政府がパリ協定からの離脱を決定したにもかかわらず、若しくは離脱決定があったからこそ、新たな協力関係が生まれています。ジェリー・ブラウン カリフォルニア州知事とはつい最近、共同声明に署名を交わしました。知事は、パリ協定を遵守するための州の組織「米国気候同盟」で主導的な役割を担っています。パリ協定は現米国大統領の在任期間を物ともせず存続し続けていくと、確信しています。

ドイツは、特にフランスをはじめEU内で、そして日本、中国、インドとも協力して、地球温暖化対策を更に推進していきたいと考えています。G7ボローニャ環境大臣会合のコミュニケは、協力関係を国際的にどのように展開していくのかを示しています。ドイツが議長国を担うG20でも必ずや野心的な成果が得られることでしょう。

本年9月にドイツでは連邦議会総選挙が実施されます。どの政党が政権を担うことになっても、ドイツの温暖化対策への取り組みは変わることなく、場合によってはより野心的な目標を掲げ継続されていくことは間違いありません。ドイツの経済産業界も確固たる意志でこの政策を受け入れています。日本とドイツは将来も必ず、両国の温暖化対策技術を更に進展させていくでしょう。

ヘンドリクス大臣寄稿(7月6日付 東京新聞朝刊)

Dr. Barbara Hendricks

関連サイト

Hochspannungsmast und Windrad

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